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マーケティングDXって何?企業の成功事例や成功のポイントをご紹介

公開:2024.5.10

更新:2025.1.6

今日、デジタル技術を活用し、新たな価値を創造するDXへの注目が高まっています。なかでもマーケティングにDXを活用する「マーケティングDX」は、利益拡大に直結するとして、多くの企業が取り組んできました。今回はさまざまな成功事例を元に、マーケティングDX推進のポイント、多くの企業が陥りがちな課題などについて解説します。


<目次>

マーケティングDXとはなにか?

マーケティングDXとは、デジタル技術を活用してマーケティング活動を変革し、顧客体験の向上やビジネスの効率化を実現することです。

DXはDigital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略で、「ディーエックス」と読みます。

デジタル技術を活用して新しいビジネスやサービスを生み出すことを意味し、産業構造や社会生活までも変えるような大きな変革を起こすものといわれています。

Google、Amazonなど、GAFAMと呼ばれる巨大IT企業を筆頭に、Spotify、Uberなど、さまざまな企業が誕生から10年から20年といった短期間で、私たちの生活を大きく変えてきたのがその実例です。

 「マーケティングDX」とは、上記のようなデジタル技術をマーケティングに活用するものです。リサーチや商品開発、顧客育成、顧客へのアプローチがデジタル技術とビッグデータの活用によって最適化され、新しい顧客体験とそれによる新たなマーケットの創出が可能になります。

マーケティングDX推進のメリット

企業がマーケティングDXを推進することで得られるメリットはさまざまありますが、代表的なものを紹介します。

勘や経験に頼らない質の高い意思決定ができる

マーケティングDXを推進することにより、勘や経験に頼らない判断ができるようになります。

たとえば戦略策定の段階では、外部環境や市場のトレンド、顧客情報、競合他社の取り組みなどに関するデータを活用し、シミュレーションや検討が可能になります。

施策実施中もリアルタイムでデータを取得し、キャンペーンの終了後ではなく実施中に方向修正なども行います。有名な例がABテストです。デザインやコピーなどを変えた複数の広告を用意し、効果を比較検討して改善していきます。

データをもとにした意思決定の価値は、たとえ判断が間違っていたとしても、どこが間違っていたのか、何を改善すればよかったのか後から振り返り、改善策を検討し、共有して、次に生かしやすい点にあります。属人的な「勘や経験」では他者と共有することができず、そのため振り返りや改善もできません。データを使って意思決定を積み重ねることではじめて、組織として意思決定の質を高めていくことができるのです。

業務効率化や生産性が向上する

マーケティング業務には顧客データの分析やアンケート配信など、同じ作業を大量に処理する必要のあるものが数多くあります。これらの業務をデジタル化することで、業務にかかる時間を短縮し人件費や紙・通信コストを削減できます。

さらに複数の業務を自動化し、休日などの担当者がいない時間帯でも業務を進めることが可能です。たとえば企業のWebページに掲載したセミナーについて、「参加」をクリックした人に対して、顧客データの登録を促した後、「メールソフトに登録」「イベント詳細&決済リンクの連絡メール送信」「決済後の参加者向け情報提供」までの一連の流れを自動化することができます。

電話やファクス受付と比べて作業効率が大幅に改善されるうえ、顧客にとっても利便性が高くなり、信頼獲得につながります。

顧客一人ひとりに最適化した1-to-1マーケティングの実施

現代ではマスマーケティングが主流だった時代とは異なり、顧客一人ひとりに最適化した個別対応が求められます。

リアル店舗の接客では、お得意様の購入記録や家族のことをしっかり記憶して、きめ細やかな気遣いをするベテラン社員が才能を発揮することができましたが、デジタル時代は顧客の数も扱うデータもはるかに多くなっています。

マーケティングDXでは、直接接点のない潜在顧客が閲覧したWebページに合わせて興味のありそうなサービスを提案したり、既存客の購入履歴やメールの問い合わせをもとに外部から入手したトレンド情報などを組み合わせて、一人ひとりの顧客に「私のための情報・サービス」を提供することができます。

マーケティング施策の見える化

マーケティング業務は、さまざまな段階で複数の施策を実行し、成果を把握する必要があります。マーケティングDXのメリットは、デジタルツールとデータ解析を活用して、業務を数値化し、効果を明確に可視化できることにもあります。

マーケティングDXにより、Web解析、SNSデータ、顧客の行動データなどの情報をリアルタイムで収集し、全体を一覧できるダッシュボードやレポートとして見ることができます。これにより、広告やキャンペーンの成果を正確に把握し、予算を効果的に配分できます。さらに、チーム内で情報共有がスムーズに行えることから、改善策についての議論や合意形成も効率的に進めることができます。

革新的なビジネスモデルの創出

マーケティングDXをすでに達成し、変革と価値創出を絶え間なく続けるDX先行企業によって、今日の経済環境は急速に変化し続けています。自社でマーケティングDXを推進することで、この変化に対応し、さらに新しいビジネスやサービスなどを自社でも生み出せるようになります。

今日では顧客ニーズが多様化し、市場が細分化されています。そのためデータ解析やAIを活用することで、顧客のニーズや行動を深く理解し、新たな価値提供の可能性を探し出すことができます。たとえば、大手が参入していない商品・サービスは何かを検討し、それを望む顧客層を具体的に描き、アプローチする方法を検討していくことで、競争力のある新しいビジネスモデルを構築し、市場で差別化を図ることができます。

デジタルマーケティングとは何が違う?

デジタルマーケティングは、マーケティングの手段や業務にデジタル技術を活用することを指します。
マーケティング業務にITツールを導入して効率化したり、SNSや電子メールを活用したマーケティング、検索エンジンの最適化(SEO)、検索エンジン広告の活用、コンテンツマーケティングなどが該当します。

一方マーケティングDXは、デジタルに限らず、アナログの活動も含めたマーケティングプロセス全体を、デジタル技術を活用することで変革し、より高い価値を創出するプロセスに変化させる業務改善のことです。マーケティングDXという業務改善を進めるなかで、デジタルマーケティングという具体的な施策を実施していくという関係になります。

マーケティングDXの成功事例をご紹介!

コカ・コーラ:アプリと自動販売機連動のマーケティング

日本コカ・コーラでは、モバイルアプリ「Coke On」を活用し、ユーザーに新たな顧客体験を提供すると同時に、ユーザーの購買行動に関するデータを取得、マーケティングに生かすという施策を成功させました。

ユーザーがCoke On対応の自動販売機にアプリをかざして商品を購入すると、「15本購入で1本無料」のスタンプカードが提供され、ユーザーの購買意欲を高めます。Coke Onはスマホの歩数計とも連動し、ウォーキングでもスタンプがもらえるというゲーム性を持たせました。さらに無料チケットを配布して新製品のサンプリングを行ったり、他社とのコラボにも活用するなど幅広い活動を展開しています。

コカ・コーラは自社の自動販売機の50%にあたる約44万台をCoke On対応としました。これはリアルタイムで膨大な顧客データを取得するシステムを自前で構築したことを意味し、飲料の補充や品そろえの変更に生かすのはもちろん、この自前データが、コカ・コーラの清涼飲料業界における優位性を確立する大きな助けになっていることは間違いありません。

参考:おトクなCoke ONを徹底解説|日経XTREND

江崎グリコ:MAツール活用で法人ノベルティ営業をオンライン化

江崎グリコでは、グリコ製品を企業キャンペーンに活用してもらう法人ノベルティ事業のオンライン営業で成果をあげました。これまでは、法人ノベルティ事業では電話営業を行っていましたが、タイミングが合わず積極的な営業ができていませんでした。

そこで、セールスフォース・ドットコムのWebサイトを活用したMA(マーケティングオートメーション)を導入し、ノベルティビジネスに興味のある「広告代理店」「IT事業者」をターゲットに、Web検索から顧客リストを集め、商品カタログへ誘導するメールを送信、反応した顧客だけに電話営業を行う一連の流れを自動化しました。

その結果、成約率が上がり、Webサイトから良質な新規顧客を獲得することができるようになりました。

参考:営業の名刺情報のリスト化だけでは限界があった商談化率の向上|SalesForce

ディノス・セシール スマホにスキャン機能でカタログから顧客行動データ取得

カタログ通販の大手、ディノス・セシールでは、カタログを見ている顧客の行動や購買心理を分析するため、スマホアプリにスキャン機能を搭載し、カタログでは得られない新しい顧客体験を提供しています。

カタログ上で興味のある商品のQRコードにスマホアプリをかざすと、単なる商品の詳細情報だけでなく、ロイヤルカスタマー向けの割引価格や在庫情報を提供し、購入を促します。

ディノス・セシールにとっては、今まで把握できなかったカタログ利用時の顧客行動をリアルタイムで得ることができるシステムであり、誰が、いつ、どのページを見て、購入に至ったのか・至らなかったのかをデータとして蓄積し、商品・サービスの改善に生かすことができます。

参考:デジタル化による顧客体験向上がカギ。ディノス・セシール、LOHACOが実践するDX事例【ECデジマ談義 #5 セミナーレポート・後編】|SMMLab

Mobility Technologies タクシー配車アプリ「GO」で需要予測

タクシー配車アプリ「GO」は、2011年に開発された日本交通の「Japan Taxi」とDeNAが2018年にリリースした「MOVE」を統合したタクシー配車アプリです。

タクシーは地域や時間帯により需要が異なり、適切な場所・時間に配車して稼働率を上げることが課題ですが、AIを活用して、事故・遅延の交通状況や気象、全国のイベント情報を収集・分析し、高精度の需要予測ができるようになりました。

「GO」アプリを使って予約・配車から決済までスマホで完結できる手軽さから、サービス開始後1年でアプリ経由の配車は5倍に伸びました。人手不足のタクシー業界では、AIによる需要予測に加えて、「GO」アプリで蓄積するタクシー利用の実績データを活用し、より精度の高い需要予測をすることが期待されます。

参考:500万DLのタクシーアプリ「GO」のDX戦略。業界を破壊させず進化させる【モビリティテクノロジーズ・中島宏1】|LIFE INSIDER

両備バス デジタル定期券アプリ開発で顧客コミュニケーション

岡山県の路線バス運行会社、両備ホールディングスは、デジタル定期券アプリ「passful」を開発し、路線バスが定額で乗り放題になる「サブスクリプション(定額制)」サービスを提供しています。

乗客の分散を図る狙いで、平日朝の通勤・通学時間は対象外としました。購入から利用までスマホだけで操作を完了でき、顧客の利便性が高まります。通勤・通学客を対象外としたことで高齢者の利用者が多く、発売時には顧客の導入サポートを行う社員のデジタル教育も併せて行いました。

従来、バス会社からのお知らせの周知については、HPやバス停でのポスター掲示しか方法がなかったものの、アプリ導入後は、アプリ内で周知したり、アンケート機能を使って意見を集めたりすることができるようになり、マーケティング活動が活発化しました。

参考:DX Selection 2023 両備バスデジタル定期券アプリ開発|経済産業省

マーケティングDX推進における課題

マーケティングDXを推進するには、これまでの業務のやり方や組織を変革する必要があります。マーケティングDXを進める際の課題について解説します。

DXを推進する社内の理解・協力体制をつくる

マーケティングDXはマーケティング部門だけではなく、企業の将来に不可欠な全社DXの一環として行うことが重要です。そのため、部門を超えての協力体制が不可欠であり、協力体制ができていないと、経営層やIT部門、人事部門など、他部門の反対からプロジェクトが頓挫するといったことはよくあります。

予算の確保

マーケティングDXを進めるには、予算の確保が必要です。DXで成功した先行企業は、通常予算とは別にDX予算を組み、5年以上の長期にわたって取り組んでいるという特徴があります。

このように予算を確保するためには、経営層のコミットメントが欠かせません。経営層にDXの重要性について理解してもらい、なかでも顧客接点の変革によって直接的な利益につながりやすいマーケティングDXから着手するよう理解を求めていきましょう。

参考:日本企業のDX推進実態調査2023~未来を創る全社DXへの挑戦~|PwC Japan

社内のDX人材不足

マーケティングDXに限らず、DX推進で問題になるのはDX人材の不足です。デジタル技術の専門知識に加えて、企業変革を推進できる高水準なビジネススキルが必要です。さらに、マーケティングDXでは、マーケティングの知識と経験が求められます。

しかし、すべての人材をマーケティング部門や自社だけでそろえるのは難しいのが現実です。自社の価値と顧客を理解している人材をマーケティングDX推進の中心に置き、不足するスキル・知識を持つ人材はIT部門や外部専門家に頼るなどして確保していきます。同時に社内での育成も進めるなど、中長期的なDX人材確保計画を作成することが大切です。

社内の利益相反調整

マーケティングDXを推進すると、利益が減少する部門が発生することも少なくありません。たとえば、ECサイトや専用アプリなどの販売チャネルを追加したことで、地方の店舗の売上が下がってしまうといったことが発生します。あるいは、定期的な受注が見込めるルートセールスをオンライン化した結果、営業部門の成績が下がることも考えられます。

このような部門間の利益相反については、全社的な視点から調整する必要があります。マーケティングDXによって生み出された人的リソースを、より付加価値の高い重点業務に振り分けるなどの具体案を出すなどしながら、合意を形成していきましょう。

マーケティングDXを推進するには?

次にマーケティングDXを推進する主なポイントを紹介します。

自社のマーケティング上の課題を把握する

マーケティングDXを進めるにあたっては、まず自社のマーケティングにおける課題を把握する必要があります。たとえば全社のDXがまだ進んでいない場合、マーケティングDXは企業の経営課題を解決するものとして位置づけられ、経営戦略との連携が非常に重要になります。

一方である程度全社DXが進展しており、情報ツールの導入などが進んでいる場合、マーケティング部門としてデータ収集・活用が不十分なことが課題となるかもしれません。その場合はまず自部門の取り組みを見直し、他部門との情報共有についての見直し・新たなシステム導入が課題となるでしょう。

このような自社の立ち位置を知るうえで有効なのが、展示会です。展示会ではさまざまな段階の企業事例やソリューションを網羅的に見ることができるため、自社のポジションを把握したり、潜在的な課題を発見するのに役立ちます。また、以下で説明する経営陣のコミットメントを得るうえでのヒントも見つかる可能性があります。

経営陣のコミットメントを得る

マーケティング課題がどのようなものであるにしろ、経営層のコミットメントを得る必要があります。マーケティングDXは利益に直結しやすい重要施策であるため、経営層の理解と後押しなしには見直しも実行も進めることはできません。

現在DXに取り組めていない企業は、DX先行企業との差が今後ますます拡大する可能性があることや、経産省が発表した「2025年の壁」問題などを例にあげながら現状への認識を共有するとともに、現実可能なDX推進プランを提示することで経営層を巻き込んでいきましょう。

参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~|経済産業省

経営戦略への貢献を示す

マーケティングDXはそれまでのマーケティング業務の進め方を変革していく業務改革であるため、年単位の取り組みとなります。このような改革を進めるには、マーケティングDXがいかに経営戦略実現に貢献するかを示すことが必要です。

コツの一つとしては、マーケティングDXの効果を示すKPIを設定し、経営戦略の進捗とリンクさせて示すことです。

KPIは「重要業績評価指標」として知られていますが、売上や利益などの財務指標だけではなく、さまざまなものをKPIとして設定することが可能です。戦略や施策に合わせ工夫して設定するKPIのほうが、施策の進捗をよりよく示すことが可能です。

マーケティングであれば、リード顧客数やコンバージョン率、あるいは重要顧客に対する提案数、顧客満足度、顧客育成に関する指標なども設定できるかもしれません。適切なKPIを検討し、その進捗プランを示すことで、経営戦略への貢献を示します。

マーケティングDXのロードマップを描く

経営層のコミットメントを得て、社内の協力体制をつくっていくには、「現実的なDX推進プラン」を作成することも必要です。中長期の経営戦略に対してマーケティングDXがいかに貢献するかを示すために、5年、10年単位のロードマップを作成しましょう。

具体的には各年の経営戦略をゴールとして、商品・サービスごとに売り上げ推移予測などを作成し、新規事業や変革を図るべき事業のイメージを描きます。そのなかでマーケティングDXが果たす役割を、経年的に示していくのです。

場合によってはこのプランのなかで、社内のDX人材確保・育成プランにも触れる必要があるかもしれません。また予測されるマーケティング上の課題を示すケースもあるでしょう。

いずれにしてもロードマップは、経営層や関係部署との「課題認識の共有」や「ゴールの共有」に役立てられ、実りある議論を形成できるでしょう。

まとめ

マーケティングDXはどのような企業にとっても必須の取り組みといえますが、スタートにあたってまず必要なのは、現状を把握して経営層に共有し、DXに対するコミットメントを得ることだといえます。

その際に役立つのが、コロナ禍を経て本格的に再開している「展示会」です。展示会で他社の状況を知ることで、気づいていなかった潜在的な課題を発見したり、多くの企業に共通する課題などへの理解を深めることができるでしょう。そのなかで経営層に対するより強い説得材料を見つけることもできるかもしれません。

日本でも一部の先行企業は、DXによる大きな成果を得る段階に入っており、今後は先行企業とその他の企業の差がより顕著になってくると見られます。こういったDXの状況を知り、課題認識を一致させるためにも、まずは展示会に足を運んでみてはいかがでしょうか。

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<執筆者プロフィール>

奥野 美代子
ファイナンシャルプランナー、中小企業診断士、経営コンサルタント。北欧の映像音響ブランドの日本支社で26年間、PRやマーケティングを統括。2011年独立に独立し、医療・サービス業の戦略策定、顧客満足・従業員満足向上、財務コンサルティングや経営者・社員向け研修を行う。