AIの導入で経理業務はどう変わる?メリットや注意点、実際の活用例を解説
公開:2026.7.6
更新:2026.7.6

毎月繰り返される請求書処理や仕訳入力に多くの時間を費やしている経理担当者は少なくありません。経理業務は正確さが求められる一方で、その多くが定型作業であり、担当者の負担は決して小さくないのが現状です。
近年、そうした課題を解消する手段としてAIの活用が注目を集めており、業務の自動化や効率化を実現する企業が増えつつあります。
この記事では、経理へのAI導入の基礎知識や具体的な活用例、導入手順を詳しく解説します。
なお、経理業務に関する最新のAI情報を効率的に収集したい方は、展示会への来場をご検討ください。
AIの導入で経理業務はどう変わる?
請求書のデータ入力や仕訳作業といった経理の定型業務は、AI-OCRや自動仕訳システムによって自動化が進んでおり、これまで手作業で行ってきた業務の大部分が機械に置き換わりつつあります。
AIが得意とする「繰り返し処理・パターン認識・異常検知」の領域は経理業務との親和性が高く、請求書処理や仕訳、経費精算、不正検知といった業務でAIの活用が広がっています。
また、独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査によれば、AIによる業務の代替可能性について「代替あり」と回答した割合は事務職が72.2%と全職種の中で最も高い結果でした。経理をはじめとする事務系業務の多くが将来的にはAIに代替されると考えられています※。
※出典:「AIの導入で職場はどう変わるのか、必要な準備は何か?」独立行政法人 労働政策研究・研修機構
経理業務にAIを導入するメリット
請求書処理や仕訳入力などの定型業務は、AIによって自動化することで時間短縮が実現でき、経理担当者はより高度な業務に注力できるようになります。
以下では、経理業務のAI導入によって得られる4つのメリットについて詳しく解説します。
請求書や仕訳処理の時間を短縮できる
ヒューマンエラーを削減できる
業務の属人化を防げる
コストを抑えられる
それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。
請求書・仕訳処理の時間を短縮できる
従来の経理業務では、請求書の受領からデータ確認・入力・仕訳までの一連の工程に多くの時間が割かれてきました。AIの活用によってこれらの処理を自動化し、作業にかかる時間を短縮できます。
AIはOCR技術を活用して請求書の取引先名・金額・支払期日などを自動で読み取り、会計システムへのデータ入力を自動化します。
また、過去の取引データを学習することで通常とは異なる金額や取引先を異常値として検出し、担当者へアラートを出すことも可能です。1件ずつ手動で確認・入力していた従来の作業量が減少し、業務効率の向上につながるでしょう。
また、月次決算に必要なデータが自動的に蓄積されることで、月末に集中していた作業負荷が分散され、決算作業の効率化が実現します。
さらに、AIは24時間稼働が可能なため、人的リソースが限られている状況でも処理スピードを維持でき、繁忙期における残業時間の削減にも効果的です。
ヒューマンエラーを削減できる
AIは、設定されたルールに従って一貫して処理を実行するため、手作業で起こりがちな勘定科目の選択ミスや金額の桁違いといった入力ミスを防止できます。
人間が繰り返し作業を行う場合、疲労や集中力の低下によるミスは避けられませんが、AIは処理量や時間帯にかかわらず、同一の精度で処理を継続できます。
また、AIは膨大な取引データの中から過去のパターンと異なる異常値を自動検知してアラートを出すため、ミスが発生した際もすぐに気付ける点もメリットです。
さらに、手作業による確認工程が削減されることで、データチェックに費やす時間が減り、内容の精査や分析業務に集中できるようになります。
業務の属人化を防げる
AIは一度設定したルールに基づいて、同じ命令であれば誰が操作しても同じ結果を出力するため、特定の担当者のスキルや経験に依存しない標準化された業務フローを構築できます。
領収書の内容から勘定科目を判断する業務など、ある程度パターン化された作業をAIに任せることで、専門知識を持たない人でも同水準の処理が行えるようになります。
また、複雑なExcelマクロや担当者独自のフローに頼った経理体制では、担当者の退職や休職時に業務が停滞するリスクがありますが、AI活用によって業務内容がシステム上に蓄積される点もメリットです。
引き継ぎにかかるコストや教育コストも軽減でき、経理部門全体の安定運営につながります。
コストを抑えられる
仕訳入力や経費精算などの定型作業をAIが代替することで、手作業にかかっていた工数が削減され、残業代や人件費を圧縮できます。
また、AIのデータ分析・予測機能を活用することで、より精度の高いキャッシュフロー予測や予算管理が実現し、資金調達コストの最適化や無駄な支出の抑制にも効果的です。
さらに、専門知識を持つ経理人材をコア業務に集中させることで、組織全体の生産性向上と業務品質の改善という効果も期待できます。
経理業務にAIを導入する際の注意点
AI導入は業務効率化をもたらす一方で、導入には注意点も存在します。以下では、導入前に把握しておくべき3つの注意点について解説します。
導入コストと費用対効果を事前に見極める必要がある
業務フローや社内体制の整備に一定の工数がかかる
非定型業務や専門判断は引き続き人間が担う必要がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
導入コストと費用対効果を事前に見極める必要がある
AI搭載の会計システムは、導入時に数十万〜数百万円規模の初期費用がかかるケースがあり、中小企業にとってはコストが導入の壁になりやすいでしょう。
また、初期費用とは別に月額利用料や保守・メンテナンス費用が継続的に発生するため、導入前に長期的な費用対効果を試算しておくことが必要です。
取引量が少ない企業では、効率化で得られる恩恵よりもコスト負担が上回るケースもあるため、自社の業務量に合ったツールを慎重に選ぶ必要があります。まずは小規模での導入から費用対効果を検証する方法も選択肢の1つです。
業務フローや社内体制の整備に一定の工数がかかる
AIシステムを導入する際には、ExcelやCSVなど既存のデジタルツールを含め、これまでの業務フローをAIに適した形に組み替える必要があり、現場への一時的な負担が生じます。
新システムの操作習得に時間がかかるうえ、社内ルールの整備や担当者への研修も必要になるため、導入前に社内体制を整えておくことが求められます。
ツールを導入しても現場が使いこなせなければ効果は出ないため、ツール選定と並行して運用ルールの策定や教育計画を進めることが大切です。
一方で、AI導入を機に従来の非効率なフローそのものを見直すことで、AI導入単体で得られる以上の業務改善につながる可能性もあります。
非定型業務や専門判断は引き続き人間が担う必要がある
AIはルールが明確な定型業務を得意とする一方、前例のないイレギュラーな取引への対応や状況に応じた会計判断といった非定型業務への対応は不得意です。
税法改正への対応や監査法人との交渉、経営層への分析提言など、専門知識と文脈の読み取りが求められる業務は、引き続き人間が担う必要があります。
また、AIはあくまで定型処理を代替するツールであり、「AI導入で経理担当者が不要になる」という認識は誤りです。AIの処理結果に対する最終確認は必ず人間が行う体制を整えつつ、担当者のスキル向上も併せて進めましょう。
経理業務で使えるAIの種類

経理業務に活用できるAIにはいくつかの種類があり、目的や業務内容によって適したツールが異なります。
以下では、経理現場への導入が進む主要なAIの種類とそれぞれの特性を解説します。
AI-OCR
生成AI
AI機能搭載のクラウド会計ソフト
AIチャットボット
AIエージェント
それぞれの種類を詳しく見ていきましょう。
AI-OCR
AI-OCRは、紙や画像・PDFに書かれた文字をスキャンするだけで自動的にデジタルデータへ変換できる技術です。従来のOCRにAIを組み合わせることで、認識精度を大幅に引き上げています。
従来型OCRの認識精度は高くても70%程度だったのに対して、AI-OCRは文章の前後の文脈を読んで文字を判断するため、90%以上の精度でデータ化できます。
また、取引先ごとに異なるフォーマットの請求書や、癖のある手書きの領収書でも、事前に読み取り位置を設定することなくデータ化が完了する点が特徴です。
さらに、Robotic Process Automation (RPA)と組み合わせると、紙の証憑のスキャンから会計システムへの登録まで一連の作業を全て自動化でき、担当者の手作業をほぼゼロにできます。
生成AI
生成AIとは、指示をもとに文章やデータを新たに作り出すAIです。経理では月次レポートの草案作成や制度改正の要約、社内向け説明文の作成といった「書く・整理する」場面での活用が広がっています。
財務諸表の数値を入力すると、前月比や前年比を含めた業績概況を自動で文章化でき、決算書の注記事項のドラフト作成にも対応できるため、決算業務にかかる時間を短縮できます。
ただし、指示内容が曖昧だと意図しない出力が返ってくることがあるため、機密性の高い財務データを直接入力することは避け、使い方のルールを社内で定めておかなければなりません。
また、既存の会計システムと生成AIを連携させるにはシステム対応が必要になるケースも多く、AI機能があらかじめ組み込まれた会計ソフトを活用するほうがスムーズに導入できます。
生成AIについてより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
▶関連記事:生成AIとは?AIとの違いやビジネスでの活用方法などを解説
AI機能搭載のクラウド会計ソフト
AI機能を搭載したクラウド会計ソフトは、銀行口座やクレジットカードの明細データを自動で取得し、取引内容を解析して仕訳の候補を提示してくれるため、日々の手入力にかかる負担を減らせます。
主なAI機能は「スキャン読み取り(AI-OCR)」「自動仕訳」「予測分析」「AIメニュー表示」の4種類で、使えば使うほどAIが学習して精度が向上していく点がメリットです。
また、仕訳の知識が少ない担当者でも、システムが提案した候補を確認して承認するだけで業務が完結するため、経理業務の標準化と担当者への業務集中を防ぐことにもつながります。
AIチャットボット
AIチャットボットとは、あらかじめ学習させたデータをもとに質問に自動で答えるツールです。経理業務では「この費用はどの勘定科目?」「申請の締切はいつ?」といった社内からの問い合わせ対応に活用されています。
また、24時間いつでも自動で回答できるため、月末や期末など問い合わせが集中する繁忙期でも経理担当者が対応に追われることなく、本来の業務に集中しやすくなります。
なお、AIチャットボットはあくまで「質問に答える」ツールであり、会計システムへの入力や処理の実行はできません。
経理規程や申請フロー、よくある質問などをあらかじめ整理して学習データとして登録しておくことが、精度の高い回答への前提条件です。
AIエージェント
AIエージェントとは、与えられたゴールに向けて情報の収集・判断・実行を自律的に行うAIのことで、会計ソフトやワークフローなど複数のツールを横断しながら、一連の業務を人の代わりに進めることができます。
例えば、請求書の受取から照合、仕訳、承認依頼、振込予約までの流れをAIが自動でつないでくれるため、担当者は最終確認だけに集中でき、月次決算の締め作業完了を数日早めることも可能です。
また、書類の不備を自ら検知して担当者へ通知したり、差し戻したりなど、イレギュラーな対応にも柔軟に対処できます。
さらに、インボイス制度や電子帳簿保存法への適合チェック、社内規程との照合をリアルタイムで自動実行できるため、内部統制の強化とコンプライアンス対応を同時に進められる点が強みです。
なお、AIエージェントについてより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
▶︎関連記事:AIエージェントとは?生成AIとの違いや種類、活用例をわかりやすく解説
経理業務にAIを導入する流れ
経理業務へのAI導入を成功させるには、目的を明確にしたうえで段階的にプロセスを踏むことが大切です。以下では、導入を進める際の3つのステップを解説します。
自社の課題を洗い出す
目的に合ったツールを選ぶ
段階的に導入を進める
それぞれの工程を詳しく見ていきましょう。
自社の課題を洗い出す
AIを導入する際は、現状の業務課題を数値で把握しましょう。
「請求書処理に月40時間かかっている」「転記ミスが月5件発生している」といった形で具体的に言語化することで、導入後の効果検証がしやすくなります。
また、課題を定量的に整理しておくと、導入後の効果測定に用いるKPIをあらかじめ設定でき、プロジェクト全体の方向性が定まります。
目的に合ったツールを選ぶ
ツールを選ぶ際は機能面だけでなく、以下の点を総合的に評価しましょう。
既存システムとの連携可否
セキュリティ対策
サポート体制
ランニングコスト
解決したい課題によって適切なツールは異なります。例えば、請求書処理にはAI-OCR、経費精算の承認フロー改善には経費精算システム、仕訳の自動化にはAI搭載クラウド会計ソフトが候補として挙げられます。
また、本採用の前にトライアル利用や小規模なPoC(概念実証)を通じて、自社の実データで動作精度と使い勝手を確認しておくと安心です。
さらに、導入後に担当者の習熟が追いつかない事態を防ぐため、使いやすさや研修プログラムの有無も選定基準に加えておくと良いでしょう。
なお、経理業務を効率化するAIツールを比較・検討するなら、バックオフィスに特化したAIソリューションが一堂に集まる展示会への来場がおすすめです。最新情報を収集する機会として、ぜひご活用ください。
段階的に導入を進める
全社一斉展開は現場の混乱を招くリスクがあるため、まずは特定の部門や業務に絞って運用を始めましょう。
試験運用は3ヶ月程度を目安に行い、処理時間の短縮率・精度・現場満足度を定量的に評価したうえで本格展開の可否を判断することをおすすめします。
また、現場のフィードバックをもとにAIの設定や業務フローを調整し、課題が解消されたことを確認してから適用範囲を広げることで、定着率が高まります。
さらに、税制改正や会計基準の変更に合わせたモデル更新と運用フローの見直しを定期的に行う体制を導入初期から整えておくことが大切です。
まとめ
経理業務へのAI導入は、請求書処理や仕訳といった定型業務の自動化だけでなく、ヒューマンエラーの削減やコスト削減など多岐にわたる効果をもたらします。
導入を成功させるには、自社の課題を数値で把握したうえで、目的に合ったツールを選び、試験運用を経て段階的に展開することが大切です。AIをうまく活用して、経理業務の効率化を実現しましょう。
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