社会保険の加入条件とは?未加入時のリスクや手続きの流れを解説
公開:2026.5.15
更新:2026.5.15

社会保険は、企業が従業員を雇用する際に必ず理解しておくべき制度です。一定の条件を満たす企業と従業員には加入義務が生じ、未加入の場合は罰則や保険料の遡及請求といったリスクが生じるためです。
2024年10月からは従業員数51人以上の企業にも社会保険の適用が拡大され、多くの中小企業が新たに対応を求められるようになりました。
この記事では、社会保険加入条件の詳細や未加入時に企業が直面するリスク、手続きの流れについて解説します。適切な労務管理を実現し、法令遵守と従業員の福利厚生の充実を両立させるための参考にしてください。
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社会保険とは
社会保険とは、国民生活における病気やケガ、老齢、障害、失業といった様々なリスクに対し、社会全体で相互に支え合う公的保険制度の総称です。
社会保険は、大きく分けて以下の5種類があります。
名称 | 概要 | 受け取れる給付内容 | 保険料の負担割合 | 担当窓口 |
健康保険 | 業務外の病気やケガ、出産、死亡時などに対して医療給付や手当金を支給する制度 | 医療費の原則7割を保険者(協会けんぽなど)が負担、出産時の一時金支給 | 会社と従業員で折半 | 協会けんぽまたは健康保険組合 |
厚生年金保険 | 主に会社員などが加入し、国民年金に上乗せして給付される公的年金制度 | 老後の年金、障害時の年金、遺族への年金 | 会社と従業員で折半 | 年金事務所(日本年金機構) |
介護保険 | 40歳以上の被保険者を対象に、要介護・要支援状態になった際に介護サービスを受けるための費用を給付する制度 | 訪問介護(ホームヘルプサービス)、通所介護などの費用補助 | 会社と従業員で折半(40歳以上) | 各市区町村の介護保険課 |
雇用保険 | 失業した労働者に対して基本手当(失業保険)や育児・介護休業中の給付、教育訓練の費用補助などを行う制度 | 失業時の給付金、育児休業中の手当 | 会社と従業員の双方(会社負担が大きい) | 最寄りのハローワーク |
労災保険 | 業務中や通勤中の事故による病気やケガ、障害、死亡などに対して、治療費や休業中の賃金を補償する制度 | 治療費の全額負担、休業中の収入補償 | 会社が全額負担(従業員負担なし) | 労働基準監督署 |
企業の人事労務担当者が日常的に加入手続きを行う必要がある主な社会保険は、健康保険・厚生年金保険・介護保険の3種類です。加入条件を満たす企業と従業員には強制加入が義務付けられているため、企業や被保険者が任意で選択することはできません。
一方で、雇用保険や労災保険についても手続きは必要ですが、入退社時に都度対応するものや、事故発生時に対応するものなど、手続きの内容やタイミングは異なります。
社会保険への加入条件
社会保険の加入条件は企業側と従業員側で異なる要件が定められており、双方が条件を満たした場合に加入義務が発生します。
以下では、企業側と従業員側それぞれの加入条件について詳しく解説します。
【企業側】社会保険への加入条件
企業が社会保険の加入対象となるかどうかは、法人か個人事業所か、あるいは事業の内容などによって異なります。法人の場合は、原則として従業員数に関係なく社会保険への加入が義務付けられています。
一方で、従業員数が51人以上の企業は「特定適用事業所」となり、2024年10月より短時間労働者についても社会保険の適用対象が拡大されました。
従業員数はフルタイムで働く従業員数と、「週所定労働時間及び月所定労働日数」がフルタイムの4分の3以上の従業員数を合計して算出します。
厚生年金保険の被保険者の総数が、直近12ヶ月のうち通算して6ヶ月以上において基準(51人)を上回る場合、適用対象です。法人は法人番号が同一の全事業所の従業員数を合計し、個人事業所は個々の事業所ごとに従業員数を算出します。
【従業員側】社会保険への加入条件
従業員が社会保険に加入するには、以下の4つの条件全てに該当する必要があります。
週の所定労働時間が20時間以上である
月額賃金が88,000円以上である
2ヶ月を超えて働く予定がある
学生ではない
週の所定労働時間は契約上の時間で判断し、残業時間は含みません。月額賃金には残業代・賞与・通勤手当・臨時的な賃金は含まれない点に注意しましょう。
また、契約上20時間に満たない場合でも実労働時間が2ヶ月連続で週20時間以上となり、それ以降も続く予定がある場合は3ヶ月目から加入対象です。
なお、休学中、定時制、通信制の学生は加入対象となります。
社会保険未加入時のリスク
社会保険への加入義務を果たさない企業には、法令違反として複数の深刻なリスクが発生します。
罰則が科される
保険料をさかのぼって請求される
助成金や融資を受けられなくなる
以下では、社会保険未加入時に企業が直面する3つの主要なリスクを解説します。
罰則が科される
健康保険法第208条および厚生年金保険法第102条に基づき、社会保険の加入義務を果たさない事業主に対して、6ヶ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
年金事務所からの加入要請や立入検査を正当な理由なく拒否した場合や、虚偽の賃金台帳を提出した場合など、調査に非協力的な対応を行うと刑事罰の対象となることがあります。
拘禁刑や罰金といった直接的な罰則に加え、報道されることで企業の社会的信用が失墜し、取引先や顧客が離れる恐れもあるでしょう。その結果、経営への影響は罰則以上に深刻となります。
保険料をさかのぼって請求される
社会保険の未加入が年金事務所の調査や、従業員からの通報により発覚した場合、保険料の徴収時効である過去2年間分の未納保険料の一括納付が求められます。
遡及徴収される保険料には給与分だけでなく、賞与分も含まれるため、従業員数や報酬額によっては高額な負担となり、企業の財務状況を大きく圧迫する危険性があります。
退職済みの従業員分については、従業員負担分の回収が困難です。そのため、本来は労使折半である保険料を企業が全額負担しなければならないケースも多く、企業側の負担がさらに重くなる点に注意が必要です。
助成金や融資を受けられなくなる
社会保険が未加入状態の企業は、雇用関係の助成金や補助金の申請要件を満たさないため、これらを活用した資金調達が制限されます。
ハローワークでの求人掲載は社会保険への適正な加入が前提条件です。そのため、未加入の企業は求人掲載には制限がかかり、採用活動に支障をきたす恐れがあります。
また、金融機関は社会保険料の未納や滞納を、企業の資金繰り悪化や倒産リスクの兆候とみなす傾向があります。融資審査の与信がこれまでより厳しく評価され、新規融資や追加融資を受けにくくなる可能性もあるでしょう。
社会保険に加入する手続きの流れ

社会保険への加入が必要と判断した場合、企業は速やかに所定の手続きを進める必要があります。
加入条件を確認する
必要書類を準備する
書類を提出し、手続きを行う
以下では、社会保険へ加入する際の具体的な手続きの流れを解説します。
加入条件を確認する
手続きを開始する前に、自社の従業員数が適用対象となる規模要件を満たしているかを確認します。併せて、雇用している従業員が所定労働時間や賃金などの加入要件を満たしているかを確認しましょう。
給与計算システムやExcelなどの表計算ツールを活用すれば、対象従業員を一覧化でき、加入条件を満たしているかを効率的に把握できます。加入対象者の把握が完了したら、速やかに必要書類の準備に移りましょう。
なお、社会保険の加入手続きを効率的に行いたい場合は、給与計算システムをはじめとする製品・サービスが集まる展示会への参加もおすすめです。
必要書類を準備する
社会保険の新規加入手続きに必要な書類は、以下のとおりです。
マイナンバーカードまたは基礎年金番号通知書(年金手帳)
健康保険・厚生年金保険 新規適用届
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
健康保険被扶養者届
手続きには、原則として加入する全従業員のマイナンバーが必要です。なお、マイナンバーを提出できない場合は、基礎年金番号による届け出も可能です。
本人確認書類などの提出は原則不要ですが、マイナンバーを届け出ない場合は、氏名や生年月日を証明する書類のコピーが必要になることがあります。
法人事業所は、提出日から90日以内に発行された法人登記簿謄本の原本を添付します。個人事業所は事業主の世帯全員の住民票の原本と、所得税・事業税・市町村民税・国民年金保険料・国民健康保険料の領収書を原則1年分用意しなければなりません。
被扶養者を加える場合は、在学証明書や住民税の非課税証明書などで扶養の事実を証明します。なお、別居している家族を扶養に入れる場合や、内縁関係の配偶者を加える場合などは、別途「現況申立書」や世帯全員の住民票などが必要になるため注意しましょう。
配偶者が国民年金第3号被保険者となる場合は、基礎年金番号を確認のうえ記載してください。
書類を提出し、手続きを行う
健康保険・厚生年金保険への加入手続きは、事業所の所在地を管轄する年金事務所または日本年金機構の事務センターへ書類を提出します。
提出方法は、以下3つから選択できます。
窓口への持参
郵送
電子申請
なお、適用事業所となった日から5日以内に手続きを完了させる必要があります。
健康保険の給付に関する手続きは、全国健康保険協会の各都道府県支部へ提出します。被保険者資格や報酬月額変更などの手続きは、日本年金機構の広域事務センターまたは最寄りの年金事務所へ提出しましょう。
まとめ
社会保険加入条件を満たす企業は、法令に基づき速やかに加入手続きを行う必要があります。加入義務を怠ると罰則が科されるだけでなく、過去2年分の保険料を遡及請求され、助成金や融資の機会も制限されるため、企業経営に影響を及ぼす恐れがあります。
なお、社会保険手続きの効率化や労務管理の最適化を図りたい場合は、労務・総務向けのツールの導入を検討すると良いでしょう。
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