マーケットインとは?プロダクトアウトとの違いや活用事例を紹介
公開:2024.12.23
更新:2025.1.6
商品やサービスを世の中に出していく際のアプローチとして、「マーケットイン」と「プロダクトアウト」という、大きく2つのスタンスの違いが存在します。さらに現在では、マーケットインを進化させた「カスタマーイン」という手法も出てきました。
企業や市場の状況によってどの手法が有効か変わってきます。この記事では各手法の違いやポイントを、成功事例を含めて解説していきます。
マーケットインとは?
マーケットインとは、「市場や顧客が求めているものを売る」という考え方です。
大量消費・大量生産のような右肩成長の時代が終わり、今日では顧客や市場のニーズを捉えてプロダクトやサービスを開発する「マーケットイン」のマーケティング手法が多く選択されるようになりました。
世の中にはすでにさまざまな商品やサービスで溢れかえっているうえ、どの市場においても既存の商品で、ある程度の満足は得られる状況にあります。
こうしたなか、企業側の都合で製品改良をしてもToo Much(過度な提供)になることが多く、顧客のニーズとの乖離が生まれてしまいます。
Too Muchの例としては、少し前の家電製品などを思い浮かべてみるとわかりやすいかもしれません。「そんな機能使わないな」と思う機能でも、企業は競合他社と差別化を図るため、自社の技術をフル活用して、過度なスペックを投入した製品を開発していた時期がありました(今でも多少そのように感じる製品はありますが)。
しかし現在は、多くの企業がマーケットインのアプローチにシフトしており、顧客起点で製品開発に取り組むケースが増えています。具体的には、市場調査や顧客調査を行い、市場や顧客が何を求めているかの仮説を立ててプロダクトやサービスの開発を行っています。
さらに進んだカスタマーインとは

マーケットインをさらに進めた「カスタマーイン」という手法もあります。これは「顧客の中の”この人”が求めているものを叶える」というものです。
カスタマーインでは、顧客全体やセグメントといった大きなグループのニーズではなく、顧客の中でも一人ひとりにフォーカスを当て、その人のニーズを深掘りして製品を開発していきます。マーケットインよりもさらに顧客を細分化することで、一人ひとりのニーズにマッチしたアプローチが可能になります。
現在多くの企業では、CRM(顧客関係管理)や、製品やブランドを熱烈に支持するファンをつくる「ファンマーケティング」に取り組んでいます。買ってもらって終わりではなく、購入後に信頼や愛着といったロイヤリティを形成していこうとするもので、そのことからも、カスタマーインの手法が選択されるケースが増えています。
プロダクトアウトとは?
高度経済成長期に主流であった「よい製品をつくれば売れる」という考え方を「プロダクトアウト」といいます。
市場や顧客のニーズ起点ではなく、企業が主体で製品を開発する手法です。これは大量生産時代に多く見られた手法で、”つくれば売れる”という時代には適していました。
ただ、時代の変化とともに、売り手の独りよがりな製品は次第に受け入れられなくなり、マーケットインへとシフトしていきました。
しかし、イノベーションが求められる昨今、プロダクトアウトの手法が再度注目されてきています。
マーケットインのメリットと他手法との違い
次に、マーケットインのメリットについて、カスタマーイン、プロダクトアウトと比較しながら解説します。それぞれの手法にはさまざまなメリットがありますが、ここでは5つずつ紹介していきます。
マーケットインのメリット
市場ニーズに即した製品開発
市場調査や顧客の声に基づいて製品を開発するため、消費者のニーズに合った商品やサービスを提供できます。
迅速な市場対応能力
顧客や市場の声を積極的に取り入れることで、変化する消費者のニーズに合わせた製品やサービスをタイムリーに提供できます。市場が変わるたびに柔軟に対応できることが強みです。
リスクの低減
顧客のニーズを反映した商品を開発するため、市場における需要予測がしやすくなり、製品が売れないリスクを軽減できます。
売上予測が立てやすい
事前のニーズ予測があるため、消費者の需要に応じた計画を立てることが可能になり、販売数量や売上を予測しやすくなります。
プロモーション活動の効果向上
ニーズの高いターゲットが事前に把握できるので、その層に向けたプロモーション活動がより効果的になります。
カスタマーインのメリット

顧客満足度の向上
個々の顧客の具体的なニーズにフォーカスするため、よりきめ細かいサービスを提供でき、顧客満足度が高まります。
顧客のロイヤリティアップ
顧客の意見やフィードバックを基にサービスを改善することで、中長期的な顧客との関係構築につながります。
リピテーションアップ
顧客満足度・ロイヤリティのアップにより、顧客からの評判形成(口コミやSNSでの言及)が期待できます。
迅速な製品改善
顧客からのフィードバックをマーケットイン以上にリアルタイムで捉えることが可能なため、常に製品の最適化が図れます。
差別化された顧客体験の提供
個々にカスタマイズされた体験を提供できるため、競合他社との差別化が図りやすくなります。
プロダクトアウトのメリット
革新的な製品開発が可能
市場や顧客の既存のニーズに縛られず、企業の技術力や創造力を最大限に活用して、新しい技術や斬新なアイデアを製品化できます。
技術力の最大活用
自社の強みである技術やリソースを前面に押し出すため、企業の得意分野や独自のノウハウを存分に発揮できます。
市場の創造が可能
顧客がまだ認識していないニーズや価値を、企業側が製品を通じて提案することで、市場を創造し、消費者に新しい価値観やライフスタイルを提案する機会が得られます。
高利益を狙える可能性
プロダクトアウトで生まれる革新的な製品は、競争が少なく独自性が高いため、高い利益率を維持しやすいです。特に、特許や技術の優位性がある場合、競合の参入障壁が高く、価格競争に巻き込まれにくいメリットがあります。
企業のブランディングに貢献
独自の製品や技術を市場に提供していくことで、市場の変化に左右されずに、一貫性を持ったアプローチが可能になります。
●各手法のメリットの違い
マーケットイン | カスタマーイン | プロダクトアウト |
・市場ニーズに即した製品開発 | ・顧客満足度の向上 | ・革新的な製品開発が可能 |
マーケットインのデメリットと他手法との違い
ここまでマーケットインのメリットについて各手法と比較しながら整理してきましたが、もちろんデメリットもあります。カスタマーイン、プロダクトアウトと比較しながらそれぞれのデメリットについて解説します。
マーケットインのデメリット
革新性が欠ける可能性
マーケットインは市場のニーズに応える形で製品をつくるため、驚きや新市場を生む革新性に乏しくなるリスクがあります。
競争激化のリスク
競合他社も同じニーズに基づいて製品を開発するため、価格競争が激しくなり、利益率が低下することがあります。
ブランドの一貫性が損なわれるリスク
顧客の要望に応じすぎると、ブランドの独自性が薄れ、長期的なブランド戦略が揺らぐ恐れがあります。
カスタマーインのデメリット
マーケティング対応の複雑化
顧客のニーズが多様化することで、業務プロセスが複雑化し、効率的な運営が難しくなり、対応に多くの労力とコストがかかるケースがあります。
顧客ニーズの把握の難しさ
顧客の要望は多様で、時には矛盾することもあるため、どの意見を優先するか迷い、製品開発や戦略の方向性が不明瞭になるリスクがあります。
スケールしにくい
顧客ごとの個別対応が求められるため、ビジネスの拡大時にリソースやコストが増大し、効率的に成長しにくい場合があります。
プロダクトアウトのデメリット
市場の変化に対応しづらい
プロダクトアウトは製品に固執するため、市場や顧客の変化に対応しにくく、対応の遅れが売上や市場シェアの低下につながることがあります。
顧客や市場との乖離リスク
技術に重きを置くことで、顧客のニーズを無視しがちになり、優れた製品でも市場に合わない場合、販売に失敗するリスクがあります。
開発コストが無駄になるリスク
技術主導で高コストな製品が市場で失敗すると、投資が無駄になり、損失が拡大し、改善にも追加のコストがかかることがあります。
●各手法のデメリットの違い
マーケットイン | カスタマーイン | プロダクトアウト |
・革新性が欠ける可能性 | ・マーケティング対応の複雑化 | ・市場の変化に対応しづらい |
マーケットインを進める上で重要なポイント
マーケットインを進める上で重要なのは、ユーザーニーズを的確かつタイムリーに把握することです。特に、表面的な要望にとどまらず、顧客の本音に基づくリアルなニーズを理解することが、競合との差別化につながります。
そのためには、直接顧客と接し、生の声や反応から本質的なニーズを捉えることが有効です。たとえば、具体的な施策として「展示会への出展」などです。顧客との対話を通じて、より深いニーズを引き出しましょう。
また、市場の変化に対応しながらも、自社のブランドの核となる理念や価値観を守り続けることが重要となってきます。これにより、信頼されるブランドの長期的な構築が可能となります。
マーケットイン・カスタマーイン・プロダクトアウトのどれが優れている?

3つのアプローチは、それぞれに異なる強みを持ち、優劣を決めることはできません。状況に応じて最適な手法を選択することが重要です。
効果的な手法を選択するための考え方の一つは、市場のライフサイクルに基づいて使い分けることです。
マーケットインは市場が成長期にあるときに適しており、広がる需要の波に乗ることができます。
カスタマーインは市場が成熟期に達した際に、競合が見落としがちな顧客のニーズに着目し、細かな要望に応えることで差別化を図ることができます。
プロダクトアウトは革新的な新製品を市場に導入する際や、成熟した市場でイノベーションを起こす際に有効です。
それぞれの手法を市場のステージや自社の状況に応じて使い分け、効果的な戦略を策定することが成功の鍵となります。
マーケティングにおける活用事例
マーケットイン・カスタマーイン・プロダクトアウトについて解説してきました。それぞれの手法で製品・サービスを投入して成功した例を紹介します。
マーケットインの事例①
某インフラ企業は顧客のニーズを直接聞きだせる対話の機会を重視する戦略を取っています。そのため、移動式の実演展示会やプライベートショーの開催、大型展示会への出展など、さまざまなイベントを活用しています。
そこで得られた顧客からのフィードバックを開発に生かし、さらなる改善につなげているそうです。また、顧客に耳を傾けるだけでなく、自社のブランディングのために、自社の魅力が伝わるコンセプトを明確に掲げ、他社との差別化を図っています。
マーケットインの事例②
某アパレル企業は、顧客の声をタイムリーに、かつ大量に収集し、そのビッグデータを活用して、商品改良を続けています。
たとえば、オンラインストアで収集できる、顧客の購買行動や商品レビュー、検索ワードなどさまざまなデータを分析することで、顧客の細かなニーズの変化に対応したり、SNSなどで発信された内容などを分析することで、顧客以外の生活者がその商品にどのような印象を抱いているのかなどを把握したりと、有名ブランドだからこそできる手法でマーケットインの戦略を実現しています。
カスタマーインの事例

某インテリア流通小売企業は、理想の店舗づくり実現のために、店舗ごとにメインターゲットとなる1人のお客様像(ペルソナ)を設定しています。そのペルソナが持つ趣向にピッタリ当てはまる部屋づくりをサポートする店舗を設計。またペルソナがどのような行動をたどって購買に結びつくかを可視化するカスタマージャーニーマップ(店内で商品を見ている時や休憩をとる時の感情なども細かくまとめられています)を作成し、顧客満足度を高めています。
プロダクトアウトの事例
某IT企業は、当時、ボタンで操作する携帯電話しかなかった市場に、タッチパネルで操作する携帯電話を投入しました。当初の購入者は一部の層(40代以上が大半)にとどまっていましたが、時を経て今では全世代に支持される圧倒的シェアを誇るブランドになりました。市場や顧客の顕在化したニーズではなく、企業の想いを実現するという強い意志と、中長期を見据えた視点があったからこそ大ヒットにつながったのでしょう。
まとめ
これまで3つのマーケティング手法について解説してきました。現在の状況を踏まえて、どの手法を選択するか、メリット・デメリットを踏まえて判断していただければと思います。
中でも「マーケットイン」は、メリットを享受する企業が多く、取り入れやすい手法だと考えます。オンラインで顧客の声を収集するとともに、展示会への出展などで企業側から積極的に顧客にアプローチし、対話してみてください。
展示会への出展は、顧客との接点を多く得られ、オンライン上で接する機会が少ない潜在層とも、密に話すことができるのでおすすめです。
市場や顧客とどのようなスタンスで向き合うべきか今一度社内で検討してみてはいかがでしょうか。
展示会出展ならBizcrew EXPO
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●著者プロフィール
藤本耕平
若者研究マーケター&コミュニケーションストラテジスト
東北芸術工科大学企画構想学科非常勤講師、淑徳大学人文学部表現学科非常勤講師
一橋大学卒業後、広告代理店ADK、Twitterを経て2024年独立。一貫してマーケティング業務に携わり、特に若者を味方につけるマーケティングプランを開発するマーケターとして活動。若者世代のインサイトに詳しく、執筆活動や講演活動も行う。
カンヌ国際広告祭、スパイクスアジアほか受賞歴多数。
著書に『つくし世代』(光文社新書)、『「つくす」若者が「つくる」新しい社会』(ベスト新書)など